Il negozio di udon Sanuki dove il sale non è arrivato a causa di un tifone
A2 · Food & Cuisine
朝[あさ]六[ろく]時[じ]、讃岐[さぬき]うどんの店[みせ]「白波[しらなみ]」に電話[でんわ]がありました。
「すみません。台風[たいふう]で橋[はし]を渡れ[わたれ]ません。今日[きょう]の塩[しお]は届け[とどけ]られません」
店主[てんしゅ]の健一[けんいち]は困り[こまり]ました。外[そと]では強い[つよい]雨[あめ]が降っ[ふっ]ていました。讃岐[さぬき]うどんの生地[きじ]には、小麦粉[こむぎこ]、水[みず]、そして塩[しお]が必要[ひつよう]です。店[みせ]の塩[しお]は、少し[すこし]しか残っ[のこっ]ていませんでした。
その日[ひ]の昼[ひる]には、三[さん]十人[じゅうにん]の予約[よやく]がありました。高校[こうこう]時代[じだい]の友達[ともだち]が、二十[にじゅう]年[ねん]ぶりに集まる[あつまる]予定[よてい]でした。
「予約[よやく]を断ろう[ことわろう]」と健一[けんいち]は言い[いい]ました。
娘[むすめ]の美咲[みさき]は首[くび]を横[よこ]に振り[ふり]ました。
「だめです。みんな、この店[みせ]のうどんを楽しみ[たのしみ]にしています」
健一[けんいち]は父[ちち]から教わっ[おそわっ]た作り方[つくりかた]を、二十五[にじゅうご]年間[ねんかん]変え[かえ]ませんでした。いつもの塩[しお]がなければ、同じ[おなじ]味[あじ]のうどんは作れ[つくれ]ません。
美咲[みさき]は近く[ちかく]の店[みせ]に電話[でんわ]をしました。でも、スーパーは閉まっ[しまっ]ていて、パン屋[ぱんや]にも塩[しお]はありませんでした。
最後[さいご]に、美咲[みさき]は向かい[むかい]の食堂[しょくどう]「山川[やまかわ]」へ行き[いき]ました。「山川[やまかわ]」は「白波[しらなみ]」のライバルです。健一[けんいち]は店主[てんしゅ]の良平[りょうへい]と、何[なん]年[ねん]も話し[はなし]ていませんでした。
良平[りょうへい]は話[はなし]を聞く[きく]と、大きな[おおきな]塩[しお]の袋[ふくろ]を持っ[もっ]てきました。
「この塩[しお]を使っ[つかっ]てください」
「でも、父[ちち]は受け取ら[うけとら]ないかもしれません」
良平[りょうへい]は笑い[わらい]ました。
「昔[むかし]、私[わたくし]の店[みせ]のガスが止まっ[とまっ]た時[とき]、健一[けんいち]さんは台所[だいどころ]を貸し[かし]てくれました。今度[こんど]は私[わたくし]が助ける[たすける]番[ばん]です」
美咲[みさき]が塩[しお]を持っ[もっ]て帰る[かえる]と、健一[けんいち]は袋[ふくろ]を見[み]て黙り[だまり]ました。
「お父さん[おとうさん]、味[あじ]を大切[たいせつ]にすることも大事[だいじ]です。でも、人[ひと]を助ける[たすける]ことも大事[だいじ]です」
健一[けんいち]は少し[すこし]考え[かんがえ]ました。それから、良平[りょうへい]の塩[しお]を使う[つかう]ことにしました。
二人[ふたり]は急い[いそい]で生地[きじ]を作り[つくり]ました。健一[けんいち]が生地[きじ]を踏み[ふみ]、美咲[みさき]が麺[めん]を切り[きり]ました。昼前[ひるまえ]には、白く[しろく]ておいしいうどんができました。
三[さん]十人[じゅうにん]の客[きゃく]は温かい[あたたかい]うどんを食べ[たべ]て、笑い[わらい]ました。
「昔[むかし]と同じ[おなじ]味[あじ]です」と、一人[ひとり]の客[きゃく]が言い[いい]ました。
夕方[ゆうがた]、雨[あめ]が弱く[よわく]なりました。健一[けんいち]はうどんを二[に]杯[ばい]作り[つくり]、一杯[いっぱい]を持っ[もっ]て向かい[むかい]の店[みせ]へ行き[いき]ました。
「良平[りょうへい]さん、塩[しお]をありがとう。今度[こんど]、一緒[いっしょ]に昼ごはん[ひるごはん]を食べ[たべ]ませんか」
良平[りょうへい]はうれしそうに笑い[わらい]ました。健一[けんいち]は、昔[むかし]の味[あじ]と人[ひと]のやさしさを、どちらも大切[たいせつ]にしました。