小豆島の醤油蔵に残った最後の木桶B1Food & CuisineListen to the whole story5 キーワード重要な語彙小豆島しょうどしまに戻っもどったとき、田中たなかゆきはその匂いにおいをすぐに思い出しおもいだした。醤油しょうゆの、深くふかくて少しすこし甘いあまい匂いにおいだ。子どもこどものころ、祖母そぼの醤油しょうゆ蔵ぞうでよく遊んあそんでいた。でも今いまは、蔵くらの中なかはずっと静かしずかになっていた。段落を翻訳「これを売っうってほしいんです」大阪おおさかから来きた男おとこ、村田むらたさんが言っいった。彼かれはグレーのスーツを着きていて、どう見みても島しまの人ひとではなかった。村田むらたさんは蔵くらの隅すみにある古いふるい木桶きおけの前まえに立ったって、スマートフォンで写真しゃしんを撮っとっていた。その木桶きおけは高さたかさが二にメートルくらいあって、太いふとい竹たけの輪わで締めしめてある。まるで時間じかんが止まっとまったように、ただ静かしずかに立ったっていた。段落を翻訳「この木桶きおけは売り物うりものじゃありません」ゆきは言っいったが、声こえが少しすこし震えふるえた。本当ほんとうのことを言うゆうと、どうすればいいか、彼女かのじょにも分からわからなかった。段落を翻訳祖母そぼが去年きょねん亡くなっなくなってから、ゆきが蔵くらを引き継いひきついだ。でも彼女かのじょは東京とうきょうでデザインの仕事しごとをしていたし、醤油しょうゆの作り方つくりかたをよく知らしらなかった。蔵くらの他ほかの桶おけは十じゅう年ねん前まえにステンレスのタンクに変わっかわっていた。だから、この木桶きおけは本当ほんとうに最後さいごの一ひとつだった。段落を翻訳村田むらたさんは続けつづけた。「この桶おけは百五十ひゃくごじゅう年ねん以上いじょう前まえに作らつくられたものです。大阪おおさかのレストランが展示てんじ品ひんとして欲しほしがっています。100万いちれいれいまん円えんで買い取らかいとらせていただけませんか」段落を翻訳100万いちれいれいまん円えん。ゆきは息いきをのんだ。蔵くらの修理しゅうりにもお金おかねがかかっていたし、正直しょうじきなところ、その金額きんがくは魅力的みりょくてきだった。「少しすこし考えかんがえさせてください」と彼女かのじょは言っいった。段落を翻訳その夜よる、ゆきは一人ひとりで蔵くらに入っはいった。木桶きおけの前まえに立ったって、古いふるい木きの表面ひょうめんにそっと手てを触れふれた。木きは少しすこし湿っしめっていて、不思議ふしぎと温かくあたたかく感じかんじた。桶おけの中なかをのぞくと、まだ少しすこし醤油しょうゆが残っのこっていた。祖母そぼが最後さいごに仕込んしこんだものだろう。段落を翻訳試しためしに、ゆきはその醤油しょうゆを指ゆびで少しすこしなめてみた。深いぶかい。すごく深いふかい味あじだった。毎日まいにち使っつかっているステンレスタンクの醤油しょうゆとは、全然ぜんぜん違うちがう。甘あまさの中なかに、複雑ふくざつな何なんかがあった。長いながい時間じかんと、古いふるい木きと、目めに見えみえない微生物びせいぶつがたくさん入っはいっているような、そんな味あじだった。段落を翻訳翌朝よくあさ、ゆきは村田むらたさんに電話でんわした。「やっぱり売れうれません」と彼女かのじょは言っいった。「でも、一ひとつお願いおねがいがあります。うちの醤油しょうゆを持っもって帰っかえってください。プレゼントです。使っつかってみてから、また話しはなしましょう」段落を翻訳村田むらたさんは少しすこし驚いおどろいたようだった。「…分かりわかりました」段落を翻訳二に週間しゅうかん後ご、村田むらたさんからメッセージが届いとどいた。「大阪おおさかのシェフが、あの醤油しょうゆはどこで買えるかえるかと聞いきいています。もし販売はんばいするおつもりなら、シェフに話はなしをつないでみますが」段落を翻訳ゆきはメッセージを読んよんで、しばらく考えかんがえた。木桶きおけを売るうるのではなく、木桶きおけで作っつくった醤油しょうゆを売るうる。そうすれば、木桶きおけは島しまに残るのこる。祖母そぼが守っまもってきたものも、残るのこる。彼女かのじょはゆっくり返信へんしんした。「ありがとうございます。やってみます」段落を翻訳蔵くらの外そとでは、秋あきの風かぜが吹いふいていた。潮しおの匂いにおいと醤油しょうゆの匂いにおいが混ざっまざって、ゆきの鼻はなに届いとどいた。それは子どもこどものころに感じかんじた、あの匂いにおいとまったく同じおなじだった。段落を翻訳初心者向けストーリーレベル別リーダー短編ストーリーFood & Cuisine storiesアプリには200以上の Japanese 物語があります。読み続けてください。アプリで続ける無料でお試しいただけます · iOS & Android理解度チェックComprehension Questions0 of 3 回答済み1Why did Murata come to visit Yuki's brewery?CHe wanted to sell stainless steel tanks to Yuki.BHe wanted to buy an old wooden barrel for a restaurant display.AHe wanted to learn how to make soy sauce.2What surprised Yuki when she tasted the soy sauce from the old wooden barrel?CIt had a very deep and complex flavor compared to modern soy sauce.BIt was very salty and had no sweetness.AIt tasted exactly the same as the soy sauce in the stainless steel tanks.3What was Yuki's final decision regarding the business?CShe decided to keep the barrel and sell the soy sauce made inside it.BShe decided to close the brewery and move back to Tokyo.AShe decided to sell the wooden barrel to Murata for 100万円.次に進む前に理解度を確認してください。Reset解答を確認