八百年生きた尼が最後に選んだ洞窟B1Myths & LegendsListen to the whole story5 キーワード重要な語彙春はるのある朝あさ、若いわかい旅人たびびとのミカは、海うみに面しめんした細いほそい崖道がけみちを歩いあるいていた。すると、大きなおおきな岩いわのそばに、白いしろい着物きものを着きた女性じょせいが静かしずかに座っすわっていた。顔かおは若くわかく、髪かみは白くしろく、目めの中なかには深くふかくて暗いくらい何なんかが宿っやどっていた。段落を翻訳「旅たびのお方かた、少しすこしだけ話しはなし相手あいてになってもらえませんか」。声こえは穏やかおだやかだったが、その言葉ことばにはミカを引き止めるひきとめる力ちからがあった。ミカは近くちかくの石いしに腰こしを下ろしおろした。「どこへ行かいかれるのですか」とミカは聞いきいた。女性じょせいは海うみを見つめみつめたまま答えこたえた。「どこへも行きいきません。今日きょう、この洞窟どうくつの中なかに入るはいるつもりです。ずっと眠るねむるために」。ミカは心配しんぱいになった。「具合ぐあいが悪いわるいのですか」。「いいえ」と女性じょせいは静かしずかに言っいった。「わたしは八百はちひゃく年ねん生きいきました」。段落を翻訳ミカは思わおもわず笑いわらいそうになった。しかし、女性じょせいの目めを見みて、笑えわらえなかった。その目めは、冗談じょうだんを言ういう目めではなかった。「……本当ほんとうのことですか」。女性じょせいはゆっくりうなずいた。「若いわかい頃ころ、父ちちが宴えんから帰るかえるとき、珍しいめずらしい魚さかなの肉にくを持ち帰りもちかえりました。父ちちは食べたべませんでしたが、わたしは食べたべてしまいました。後あとになって、それが人魚にんぎょの肉にくだったと知りしりました。その日ひからわたしは年としを取らとらなくなったのです」。段落を翻訳ミカは息いきをのんだ。「不老不死ふろうふし……」。 「そうです。最初さいしょの百ひゃく年ねんは、確かたしかに楽しいたのしいこともありました。でも、友ともが死にしにました。家族かぞくが死にしにました。愛しあいした人ひとも、みんな死にしにました。わたしだけが残さのこされました」。女性じょせいの声こえは静かしずかだったが、その重さおもさはミカにも伝わっつたわった。「百ひゃく年ねんが三百さんひゃく年ねんになり、五百ごひゃく年ねんになりました。この国くにが何度なんども変わるかわるのを見みました。戦いくさがあり、平和へいわがあり、また戦いくさがありました。でもわたしにとって、時間じかんはただ長いながいだけでした。美しいうつくしいものを見みても、心こころが動かうごかなくなっていました」。段落を翻訳「では、なぜ今日きょうなのですか」とミカは聞いきいた。「八百はちひゃく年ねん生きいきて、なぜ今日きょうこの洞窟どうくつを選んえらんだのですか」。女性じょせいはそこで、初めてはじめて微笑んほほえんだ。「今朝けさ、梅うめの花はなを見みました。三百さんひゃく年ねん前まえにも、五百ごひゃく年ねん前まえにも見みたことのある、同じおなじ梅うめの花はなです。でも今朝けさは……美しいうつくしいと感じかんじました。本当ほんとうに、心こころの中なかで動くうごくものがありました」。段落を翻訳女性じょせいは続けつづけた。「八百はちひゃく年間ねんかん、感じかんじられなかったものが、今朝けさは感じかんじられた。それはきっと、終わりおわりが近いちかいというしるしだと思いおもいます。やっと、終わっおわっていいのだと」。ミカは何なんも言えいえなかった。「永遠えいえんに生きるいきることは、贈り物おくりものではありませんでした」と女性じょせいは言っいった。「でも、今日きょうの朝あさは贈り物おくりものでした」。段落を翻訳女性じょせいはゆっくりと立ち上がりたちあがり、洞窟どうくつの暗いくらい入り口いりぐちへ向かっむかった。そして振り返りふりかえり、ミカに聞いきいた。「あなたも、梅うめの花はなを見みたことがありますか」。「はい」とミカは小さなちいさな声こえで答えこたえた。「よかった。ずっと美しいうつくしいと感じかんじられるといいですね」。段落を翻訳女性じょせいは洞窟どうくつの中なかへ消えきえていった。ミカはその場ばに立ったったまま、しばらく動けうごけなかった。やがて、洞窟どうくつの中なかからかすかな花はなの香りかおりがした。ミカはその日ひ、道みちに落ちおちていた梅うめの小枝こえだを一いち本ぽん拾っひろって、洞窟どうくつの入り口いりぐちに置いおいた。それが彼女かのじょにできる唯一ゆいいつのことだったし、それで十分じゅうぶんな気きがした。段落を翻訳初心者向けストーリーレベル別リーダー短編ストーリーMyths & Legends storiesアプリには200以上の Japanese 物語があります。読み続けてください。アプリで続ける無料でお試しいただけます · iOS & Android理解度チェックComprehension Questions0 of 3 回答済み1Why did the woman stop aging?CShe drank a magical fountain water.BShe was blessed by a forest spirit.AShe ate the meat of a mermaid.2How did the woman feel about living for eight hundred years?CShe felt proud of being the longest-living person.BShe found it lonely and emotionally draining because everyone around her died.AShe felt happy because she saw many changes.3What was the reason the woman decided that today was the day to enter the cave?CShe saw a plum blossom and felt beauty again, which signaled her time was up.BShe was told by a fortune teller that it was time.AShe wanted to escape the winter cold.次に進む前に理解度を確認してください。Reset解答を確認