神在月に出雲へ向かった神が帰らなかった理由B2Myths & LegendsListen to the whole story5 キーワード重要な語彙十じゅう月がつになると、八百万やおよろずの神々かみがみは出雲いずもへと向かうむかう。この月つきを神在かみあり月つきと呼ぶよぶのは、日本にっぽん中ちゅうの神かみが出雲大社いずもたいしゃに集まりあつまり、人々ひとびとの縁えんや来年らいねんの収穫しゅうかくについて話し合うはなしあうからだ。残さのこされた各地かくちの神社じんじゃは、神かみのいない月つき——神無月かんなづき——となる。人々ひとびとはそのことを知っしっていた。しかし、浦風うらかぜ村むらの小さなちいさな祠ほこらに祀らまつられた綱代あじろの神かみが、その会議かいぎから二に度どと帰らかえらなかったことは、誰だれも予想よそうしていなかった。段落を翻訳綱代あじろの神かみは、長いながい年月としつきをかけて村人むらびとたちを静かしずかに見守っみまもってきた。漁師りょうしが嵐あらしに巻き込ままきこまれれば、風かぜを緩めゆるめ、船ふねを岸きしへと導いみちびいた。子供こどもが崖がけから落ちおちそうになれば、足元あしもとの土つちを固くかたくした。神かみとしては小さなちいさな存在そんざいだったが、村むらにとっては欠かせかかせない守り手まもりてだった。神かみは、村むらの営みいとなみそのものに溶け込んとけこんでいたのだ。段落を翻訳その年としの出雲いずもの会議かいぎは、いつにも増しまして重苦しいおもくるしい雰囲気ふんいきだった。大神おおみわたちが集うつどう広間ひろまの中央ちゅうおうには、よりあわされた無数むすうの赤いあかい糸いとが積まつまれていた。それぞれの糸いとは人間にんげんの縁えんを表しあらわしている。大国たいこく主命しゅうめいの右腕みぎうでとも呼ばよばれる福の神ふくのかみが、今年ことし切るきるべき糸いとの束たばを卓上たくじょうに広げひろげた。その光景こうけいは、まるで運命うんめいの選別せんべつを行うおこなう冷徹れいてつな儀式ぎしきのようだった。段落を翻訳「これを断ち切るたちきることで、次つぎの縁えんが生まれるうまれる」と福の神ふくのかみは静かしずかに言っいった。「これは摂理せつりだ。個人こじんの情じょうに流さながされてはならない」段落を翻訳綱代あじろの神かみは、束たばの中なかの一いち本ぽんに目めを止めとめた。その糸いとには、見覚えみおぼえがあった。村むらの漁師りょうし、庄二しょうじの糸いとだった。庄二しょうじは若いわかい男おとこで、隣村りんそんの娘むすめ——波江なみえという名なの、海うみの色いろをした目めをした娘むすめ——と深くふかく愛し合っあいしあっていた。綱代あじろの神かみはその二人ふたりの縁えんを、何なん年ねんもかけて静かしずかに育んはぐくんできた。嵐あらしの夜よる、庄二しょうじが波江なみえの家いえの軒先のきさきに宿やどを借りかりた偶然ぐうぜんも、その春はるの祭りまつりで二人ふたりが隣となりに座っすわった席せきの配置はいちも、すべて神かみの静かしずかな手配てはいだった。段落を翻訳「待っまってください」。綱代あじろの神かみは立ち上がったちあがった。広間ひろまがしんと静まり返っしずまりかえった。小さなちいさな祠ほこらの神かみが大神おおみわたちの前まえで口くちを開くひらくのは、異例いれいのことだった。神々かみがみの視線しせんが突き刺さるつきささる中なか、綱代あじろの神かみは毅然きぜんとして続けつづけた。「その糸いとは、私わたくしが結んむすんだものです。彼かれらの縁えんは、まだ終わっおわっていません」段落を翻訳福の神ふくのかみは眉まゆ一ひとつ動かさうごかさず答えこたえた。「それは知っしっている。しかし、縁えんは永遠えいえんではない。断ち切るたちきることで、両者りょうしゃに新たあらたな道みちが開かひらかれる。それがこの会議かいぎの役割やくわりだ。お前おまえは神かみとしての本分ほんぶんを忘れわすれたのか」段落を翻訳「綱代あじろの神かみよ」と、さらに上位じょういの神かみが静かしずかに口くちを開いひらいた。声こえは穏やかおだやかだったが、その重さおもさは岩いわのようだった。「お前おまえは長くながく村むらにいすぎた。人間にんげんに肩入れかたいれすることは、神かみの本分ほんぶんに反するはんする。その糸いとを切るきることに同意どういするなら、お前おまえは村むらに戻れるもどれる。拒むこばむなら、出雲いずもに留まれとまれ。二に度どと村むらの土つちを踏むふむことは許さゆるさない」段落を翻訳これは追放ついほうではなかった。選択せんたくだった。綱代あじろの神かみは、広間ひろまの天井てんじょうを見上げみあげた。遠くとおく、北きたの空そらの向こうむこうに、波なみの音おとが聞こえるきこえるような気きがした。庄二しょうじの笑顔えがおと、波江なみえの声こえが思い浮かんおもいうかんだ。神かみは、静かしずかに首くびを横よこに振っふった。「私わたくしは拒みこばみます」。その言葉ことばは、広間ひろまにゆっくりと染み込んしみこんでいった。神かみは、自らみずからの存在そんざいを賭しとして、二人ふたりの未来みらいを守るまもることを選んえらんだのだ。段落を翻訳十一じゅういち月がつが来きても、浦風うらかぜ村むらの祠ほこらに神かみは戻らもどらなかった。師走しわすになっても、正月しょうがつになっても。祠ほこらの中なかは空そらのままだった。しかし不思議ふしぎなことに、誰だれも不幸ふこうになる者ものはいなかった。庄二しょうじと波江なみえは翌春よくはるに祝言しゅうげんを挙げあげ、海うみは穏やかおだやかで、子供たちこどもたちは健やかすこやかだった。村むらの古老ころうたちは言っいった。「神かみ様さまは、出雲いずもが気きに入っはいったのだろう」。しかし、もっと深くふかく考えるかんがえる者ものはこう思っおもった。神かみが帰らかえらなかったのは、罰ばつを受けうけたからではない。自らみずから留まるとまることを選んえらんだのだ——その選択せんたくのために。空そらの祠ほこらは今いまも村むらに残っのこっている。人々ひとびとはそこへ詣でるもうでるとき、神かみがいないことを知りしりながらも手てを合わせるあわせる。そして、ときに誰だれかがこう呟くつぶやく。「あの神かみは、人ひとを愛しあいしすぎたのかもしれない」。その言葉ことばが正しいただしいかどうかは、誰だれにも分からわからない。ただ、庄二しょうじの家いえの子孫しそんは代々だいだい、必ずかならず漁りょうから無事ぶじに帰っかえってきた。神かみの加護かごが、形かたちを変えかえて今いまもそこに残っのこっているかのように。段落を翻訳初心者向けストーリーレベル別リーダー短編ストーリーMyths & Legends storiesアプリには200以上の Japanese 物語があります。読み続けてください。アプリで続ける無料でお試しいただけます · iOS & Android理解度チェックComprehension Questions0 of 3 回答済み1Why did the minor god decide not to return to his shrine?CHe enjoyed the meeting in Izumo and decided to stay forever.BHe chose to sacrifice his position to protect the fated bond of the couple, Shoji and Hae.AHe was punished by the gods for speaking out of turn.2What did the red threads in the meeting room represent?CThe years the god spent watching over the village.BThe amount of fish caught by the villagers.AThe fate and bonds of human beings.3What happened to the village after the god failed to return?CThe village prospered, and the couple was able to marry and live happily.BThe villagers forgot about the god entirely.AThe village fell into poverty and chaos.次に進む前に理解度を確認してください。Reset解答を確認