南アルプスを単独縦走した女教師の夏休みB2Nature & AdventureListen to the whole story5 キーワード重要な語彙三さん月がつの卒業式そつぎょうしきが終わっおわった翌日よくじつ、橋本はしもとゆかりはある生徒せいとに声こえをかけられた。「先生せんせいって、本当ほんとうにやりたいことって、あるんですか?」段落を翻訳三さん年間ねんかん受け持っうけもったクラスの田中たなか凜だった。物事ものごとをまっすぐ見るみる子こで、成績せいせきも優秀ゆうしゅうだった。だからこそ、その言葉ことばがゆかりの胸むねに深くふかく刺さっささった。「もちろんあるわよ」と笑っわらって答えこたえたが、その夜よるは眠れねむれなかった。自分じぶんの中なかに、本当ほんとうにそんな情熱じょうねつが残っのこっているのだろうか。自問自答じもんじとうが頭あたまの中なかで渦うずを巻いまいた。段落を翻訳教師きょうしになって十二じゅうに年ねん。生物せいぶつの授業じゅぎょうは嫌いきらいではない。むしろ、生命せいめいの神秘しんぴを解き明かすときあかすこの仕事しごとに誇りほこりを持っもっていたはずだった。でも最近さいきん、何なんかが静かしずかに摩耗まもうしていた。教科書きょうかしょ通りとおりの知識ちしきを教えおしえ、進路しんろ指導しどうに追わおわれ、生徒せいとの個性こせいを評価ひょうかするのではなく、型かたにはめることに必死ひっしになっていた。それが何なんかを確かめたしかめたくて——あるいは、その現実げんじつから逃げ出しにげだしたくて——ゆかりは夏休みなつやすみに入るはいると同時どうじに、重いおもいザックを背負っせおって広河原ひろがわらのバスターミナルに立ったっていた。段落を翻訳計画けいかくは北岳きただけから始まりはじまり、間まノ岳たけ、農鳥のうとり岳たけを縦走じゅうそうしたのち、塩見しおみ岳たけし、荒川あらかわ三さん山さん、赤石あかいし岳たけを経へて、最南端さいなんたんの光岳みつたけまで至るいたる十とう日間かかんのルートだった。南アルプスみなみあるぷすは北アルプスきたあるぷすに比べくらべて登山者とざんしゃが少なくすくなく、稜線りょうせん上じょうの山小屋やまごやの間隔かんかくも長いながい。ゆかりはそれを知っしったうえで、あえて一人ひとりを選んえらんだ。静寂せいじゃくの中なかで、自分じぶんの足音あしおとだけを聞きききたかったのだ。段落を翻訳三みっ日か目めまでは順調じゅんちょうだった。北岳きただけの頂上ちょうじょうから見下ろすみおろす甲府こうふ盆地ぼんちの広がりひろがり、間まノ岳たけの広大こうだいな山頂さんちょう台地だいち、農鳥のうとり小屋こやの無愛想ぶあいそうな小屋こや番ばんのおじさんが淹れいれてくれた温かいあたたかいコーヒー——すべてが鮮やかあざやかで、日常にちじょうの職員室しょくいんしつとは完全かんぜんに別べつの世界せかいだった。空気くうきが薄くうすくなるにつれ、頭あたまの中なかの雑音ざつおんも消えきえていくようだった。段落を翻訳問題もんだいは四よん日か目めの朝あさに起きおきた。農鳥のうとり岳たけを越えこえて大門だいもん沢さわへの下降かこう路ろに入っはいったとたん、稜線りょうせんから濃いこいガスが流れ込んながれこんできた。気温きおんが急きゅうに下がりさがり、雨あめが横殴りよこなぐりに打ち付けうちつけてきた。夏なつの南アルプスみなみあるぷすでよくある、午後ごごの雷雨らいうが早まっはやまったのだ。ゆかりはレインウェアを着込みきこみ、地図ちずとコンパスを確認かくにんした。次つぎの道標どうひょうまであと二に時間じかんはかかる。視界しかいは五ごメートルもなかった。段落を翻訳岩いわと這いはい松まつに囲まかこまれた細いほそい尾根おね道みちで、ゆかりは立ち止まったちどまった。地図ちず上じょうでは道みちは明確めいかくだが、ガスの中なかでは踏み跡ふみあとがわかりにくい。一歩いっぽ先さきが崖がけになっているかもしれない。引き返すひきかえすべきか、進むすすむべきか。心臓しんぞうの鼓動こどうが耳元みみもとで大きくおおきく響くひびく。段落を翻訳ザックを下ろしおろし、岩いわの陰かげに身みを寄せよせた。雨あめの中なかでコンパスの針はりをじっと見みた。北きたを確認かくにんし、道みちの傾斜けいしゃと風向きかざむきから現在地げんざいちを推測すいそくした。昨年さくねん、地図ちず読みよみの講習会こうしゅうかいで学んまなんだことが今いまになって明確めいかくに役立っやくだっていた。恐怖きょうふに飲み込まのみこまれそうになりながらも、論理的ろんりてきに状況じょうきょうを分析ぶんせきする自分じぶんを見つけみつけた。三さん十分じゅうぶんかけて慎重しんちょうに下降かこうし、ゆかりはようやく鉄てつのポールの道標どうひょうを見つけみつけた。霧きりの中なかに立つたつそれを見みた瞬間しゅんかん、膝ひざから力ちからが抜けぬけそうになった。それは恐怖きょうふではなく、深いふかい安堵あんどだった。段落を翻訳奈良田ならだで一いち泊はく置いおいてから、ゆかりは再びふたたび山やまに入っはいった。塩見しおみ岳たけしの山頂さんちょうに立ったったのは七なな日か目めの夕方ゆうがただった。雲くもが引きひき、夕陽ゆうひが赤石山脈あかいしさんみゃくの奥おくまで赤くあかく染めそめていった。誰だれもいない山頂さんちょうで、ゆかりは声こえを出さださずに笑っわらった。泣いないているのか笑っわらっているのかわからないような顔かおで。段落を翻訳——本当ほんとうにやりたいことって、あるんですか。凜の言葉ことばが、また聞こえきこえた。でも今度こんどは、違うちがう重さおもさで届いとどいた。これまでゆかりは「やりたいこと」を何なんか特別とくべつな使命しめいか夢ゆめだと思っおもっていた。でも七なな日間かかん、地図ちずを読みよみ、天気てんきを読みよみ、自分じぶんの体力たいりょくと相談そうだんしながら一いち歩ほずつ歩いあるいてきた今いま、気づいきづいたことがある。自分じぶんは、考えるかんがえることが好きすきだ。生き物いきものの仕組みしくみが好きすきだ。生徒せいとが「なぜ?」と目めを輝かかがやかせる瞬間しゅんかんが、好きすきだ。それは十二じゅうに年間ねんかん、変わっかわっていなかった。ただ、その感覚かんかくが日々ひびの砂埃すなぼこりに埋もれうずもれていただけだった。段落を翻訳光岳みつたけの山頂さんちょうに着いついたのは十とう日か目めの昼前ひるまえだった。南アルプスみなみあるぷす最南端さいなんたんの百名山ひゃくめいざん。そこから振り返るふりかえると、自分じぶんが歩いあるいてきた稜線りょうせんが霞かすみの中なかに連なっつらなっていた。次つぎの学期がっきが始まっはじまったら、野外やがい観察かんさつの授業じゅぎょうを提案ていあんしようと思っおもった。去年きょねんの職員しょくいん会議かいぎで「コストが高いたかい」と言わいわれて諦めあきらめていたやつだ。もう一度いちど、資料しりょうを作っつくって、丁寧ていねいに説明せつめいしよう。生徒せいとたちに、この稜線りょうせんで見つけみつけたような「問いとい」の面白おもしろさを伝えつたえたい。段落を翻訳バスに乗りのり、温泉おんせんに浸かりつかり、ゆかりは深くふかく眠っねむった。夢ゆめを見みなかった。それがなぜか、おかしいほど気持ちきもちよかった。段落を翻訳初心者向けストーリーレベル別リーダー短編ストーリーNature & Adventure storiesアプリには200以上の Japanese 物語があります。読み続けてください。アプリで続ける無料でお試しいただけます · iOS & Android理解度チェックComprehension Questions0 of 3 回答済み1Why did Yukari decide to go on a solo hike in the Southern Alps?CTo train for an upcoming mountaineering competition.BTo find an answer to a student's challenging question about her passion.ATo escape her responsibilities as a teacher.2What major challenge did Yukari face on the fourth day?CShe encountered severe weather conditions and limited visibility.BShe was injured during a climb.AShe lost her map and compass.3What did Yukari ultimately realize by the end of her trip?CShe needs to move to the mountains to find true happiness.BShe has always loved teaching biology and sparking curiosity in her students.AShe wants to quit teaching and become a mountain guide.次に進む前に理解度を確認してください。Reset解答を確認