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Saigo Takamoris sidste morgenmad

1877年[ねん]9月[がつ]24日[か]、鹿児島[かごしま]・城山[しろやま]。夜[よる]が終わる[おわる]前[まえ]に、西郷隆盛[さいごうたかもり]は目[め]を覚まし[さまし]た。空[そら]はまだ暗かっ[くらかっ]た。山[やま]の木々[きぎ]の向こう[むこう]から、かすかに風[かぜ]の音[おと]が聞こえ[きこえ]た。西郷[さいごう]は静か[しずか]に体[からだ]を起こし[おこし]、周り[まわり]を見[み]た。疲れ[つかれ]た顔[かお]をした男[おとこ]たちが、地面[じめん]で眠っ[ねむっ]ていた。一[いち]か月[かげつ]前[まえ]には数百[すーひゃく]人[にん]いたのに、今[いま]はもう四[よん]十人[じゅうにん]もいなかった。

「西郷[さいごう]さん。」若い[わかい]男[おとこ]、別府[べっぷ]晋介[しんすけ]が近づい[ちかづい]てきた。手[て]に小さな[ちいさな]鍋[なべ]を持っ[もっ]ていた。「飯[めし]ができました。今日[きょう]は米[べい]があります。」西郷[さいごう]は少し[すこし]驚い[おどろい]た顔[かお]をした。そして、ゆっくりうなずいた。「そうか。ありがとう。」

二人[ふたり]は並ん[ならん]で座り[すわり]、冷たい[つめたい]朝[あさ]の空気[くうき]の中[なか]で食べ[たべ]始め[はじめ]た。米[べい]は少なかっ[すくなかっ]たが、温かかっ[あたたかかっ]た。西郷[さいごう]はゆっくりと、一口[ひとくち]一口[ひとくち]を大切[たいせつ]に食べ[たべ]た。急ぐ[いそぐ]様子[ようす]は全く[まったく]なかった。「西郷[さいごう]さん、」と別府[べっぷ]は言っ[いっ]た。声[こえ]が少し[すこし]震え[ふるえ]ていた。「今日[きょう]のことが…怖く[こわく]ないですか。」

西郷[さいごう]は答える[こたえる]前[まえ]に、しばらく空[そら]を見[み]た。東[ひがし]の空[そら]が、少し[すこし]ずつ明るく[あかるく]なっていた。「怖い[こわい]、か。」西郷[さいごう]はゆっくりと言っ[いっ]た。「怖く[こわく]ないと言え[いえ]ば、嘘[うそ]になる。」別府[べっぷ]は驚い[おどろい]た。西郷[さいごう]がそんな言葉[ことば]を言う[ゆう]とは思っ[おもっ]ていなかったのだ。

「でも、」と西郷[さいごう]は続け[つづけ]た。「この飯[めし]が美味い[うまい]のは本当[ほんとう]だ。今朝[けさ]の空気[くうき]が冷たい[つめたい]のも本当[ほんとう]だ。そして、おまえたちがまだ俺[おれ]の隣[となり]にいるのも、本当[ほんとう]のことだ。」西郷[さいごう]は別府[べっぷ]の方[ほう]を向い[むい]た。大きな[おおきな]目[め]で、静か[しずか]に、しかしはっきりと見[み]た。「本当[ほんとう]のことを、最後[さいご]まで生きる[いきる]。それだけだ。」

別府[べっぷ]は何[なん]も言え[いえ]なかった。でも、胸[むね]の中[なか]で何[なん]かが変わっ[かわっ]た気[き]がした。やがて、山[やま]の向こう[むこう]から太鼓[たいこ]の音[おと]が聞こえ[きこえ]てきた。政府[せいふ]の軍隊[ぐんたい]が動き始め[うごきはじめ]ていた。三万[さんまん]人[にん]以上[いじょう]の兵士[へいし]が、この小さな[ちいさな]山[やま]を囲ん[かこん]でいた。

男[おとこ]たちは起き上がり[おきあがり]、静か[しずか]に準備[じゅんび]を始め[はじめ]た。西郷[さいごう]は立ち上がる[たちあがる]前[まえ]に、もう一度[いちど]鍋[なべ]を見[み]た。まだ少し[すこし]だけ米[べい]が残っ[のこっ]ていた。「もったいないな。」彼[かれ]はそう小さく[ちいさく]つぶやいて、笑っ[わらっ]た。その笑顔[えがお]を見[み]て、別府[べっぷ]も笑っ[わらっ]た。周り[まわり]の男[おとこ]たちも、一人[ひとり]、また一人[ひとり]と笑い[わらい]始め[はじめ]た。最後[さいご]の朝[あさ]の、短い[みじかい]笑い[わらい]だった。「行く[いく]ぞ。」西郷[さいごう]は立ち上がり[たちあがり]、山[やま]の下[した]を見[み]た。