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आधी रात को सेंटो (सार्वजनिक स्नानघर) में मिला एक बुजुर्ग

ケンは東京[とうきょう]に来[き]て三[さん]ヶ月[かげつ]になった。仕事[しごと]は毎日[まいにち]忙しかっ[いそがしかっ]た。でも、友達[ともだち]はいなかった。毎晩[まいばん]、一人[ひとり]でアパートに帰っ[かえっ]た。ある夜[よる]、ケンはとても疲れ[つかれ]ていた。心[こころ]が重かっ[おもかっ]た。「もう帰ろう[かえろう]。東京[とうきょう]は自分[じぶん]の場所[ばしょ]じゃない。」そう思い[おもい]ながら、暗い[くらい]道[みち]を歩い[あるい]た。アパートの近く[ちかく]に、古い[ふるい]銭湯[せんとう]があった。名前[なまえ]は「富士[ふじ]湯[ゆ]」だった。ケンはその前[まえ]を毎日[まいにち]歩い[あるい]ていたが、一度[いちど]も入っ[はいっ]たことはなかった。その夜[よる]、灯り[あかり]がまだついていた。ケンは少し[すこし]立ち止まり[たちどまり]、「入っ[はいっ]てみよう」と思っ[おもっ]た。

ドアを開ける[あける]と、温かい[あたたかい]湿っ[しめっ]た空気[くうき]が流れ[ながれ]てきた。石鹸[せっけん]と木[き]の匂い[におい]がした。番台[ばんだい]に小さい[ちいさい]おばあさんがいた。「いらっしゃい。四百[よんひゃく]円[えん]ね。」ケンは服[ふく]を脱い[ぬい]で、浴場[よくじょう]に入っ[はいっ]た。白い[しろい]タイルの壁[かべ]に、大きい[おおきい]富士山[ふじやま]の絵[え]があった。天井[てんじょう]は高く[たかく]て、古い[ふるい]木[き]でできていた。湯船[ゆぶね]のお湯[ゆ]はとても熱かっ[あつかっ]た。ケンは「あつい!」と言い[いい]ながら、ゆっくり体[からだ]をお湯[ゆ]に入れ[いれ]た。

浴場[よくじょう]にはもう一人[ひとり]だけ人[ひと]がいた。七十[ななじゅう]歳[さい]くらいの老人[ろうじん]だった。白い[しろい]短い[みじかい]髪[かみ]で、背中[せなか]が少し[すこし]丸かっ[まるかっ]た。老人[ろうじん]はゆっくり体[からだ]を洗っ[あらっ]ていた。「遅い[おそい]時間[じかん]だねえ。」老人[ろうじん]はケンに言っ[いっ]た。「はい。仕事[しごと]が長かっ[ながかっ]たです。」「どこから来[き]たの?」「福岡[ふくおか]です。三[さん]ヶ月[かげつ]前[まえ]に来[き]ました。」老人[ろうじん]はゆっくりうなずいた。「それは大変[たいへん]だ。私[わたくし]もね、昔[むかし]、大阪[おおさか]から来[き]たんだよ。五十[ごじゅう]年[ねん]前[まえ]のことだ。最初[さいしょ]は本当[ほんとう]に寂しかっ[さびしかっ]た。」

「そうなんですか。」ケンは少し[すこし]驚い[おどろい]た。「そうだよ。でもね、この銭湯[せんとう]に来[き]て、近所[きんじょ]の人[ひと]と話し[はなし]て、だんだん慣れ[なれ]たよ。銭湯[せんとう]は不思議[ふしぎ]な場所[ばしょ]なんだ。みんな裸[はだか]になるから、話し[はなし]やすいんだ。」老人[ろうじん]は静か[しずか]に笑っ[わらっ]た。顔[かお]に深い[ふかい]しわがあったが、目[め]はとても明るかっ[あかるかっ]た。ケンはその言葉[ことば]を聞い[きい]て、心[こころ]が軽く[かるく]なった。お湯[ゆ]は熱かっ[あつかっ]たが、気持ち[きもち]よかった。「ここには長く[ながく]来[き]ていますか?」ケンは聞い[きい]た。「四十[よんじゅう]年[ねん]だよ。昔[むかし]の友人[ゆうじん]ともここで仲良く[なかよく]なった。もう亡くなっ[なくなっ]てしまったけどね。」老人[ろうじん]は静か[しずか]に言っ[いっ]た。二人[ふたり]はしばらく黙っ[だまっ]ていた。でも、それは悲しい[かなしい]沈黙[ちんもく]ではなかった。温かい[あたたかい]沈黙[ちんもく]だった。

時間[じかん]になって、ケンは服[ふく]を着[き]た。出口[でぐち]のところで、老人[ろうじん]に会っ[あっ]た。「また来[き]てね。」老人[ろうじん]は言っ[いっ]た。「はい。また来[き]ます。」ケンはそう答え[こたえ]た。本当[ほんとう]の気持ち[きもち]だった。外[そと]は冬[ふゆ]の空気[くうき]で冷たかっ[つめたかっ]た。でも、ケンの心[こころ]は温かかっ[あたたかかっ]た。アパートに向かっ[むかっ]て歩き[あるき]ながら、ケンは思っ[おもっ]た。「もう少し[すこし]だけ、ここにいてみよう。」