Persembahan yang mendapat markah sifar dalam pertandingan
A2 · Music & Arts
美咲[みさき]はステージの上[うえ]でピアノを止め[とめ]ました。
客席[きゃくせき]の百[ひゃく]人[にん]以上[いじょう]が静か[しずか]になりました。三[さん]人[にん]の審査員[しんさいん]も驚い[おどろい]た顔[かお]をしました。コンクールの途中[とちゅう]で演奏[えんそう]を止める[とめる]人[ひと]は、普通[ふつう]いません。
でも美咲[みさき]は目[め]を閉じ[とじ]て、また弾き[ひき]始め[はじめ]ました。
それはショパンではありませんでした。美咲[みさき]が自分[じぶん]で作っ[つくっ]た曲[きょく]でした。亡くなっ[なくなっ]たおばあちゃんのための曲[きょく]でした。おばあちゃんはいつも「あなたの音楽[おんがく]は本物[ほんもの]だ」と言っ[いっ]ていました。
ホールはとても静か[しずか]でした。誰[だれ]も動き[うごき]ませんでした。美咲[みさき]の曲[きょく]は短かっ[みじかかっ]たですが、とても美しかっ[うつくしかっ]たです。
演奏[えんそう]が終わり[おわり]ました。拍手[はくしゅ]がありました。でも審査員[しんさいん]の顔[かお]は難し[むずかし]そうでした。
結果[けっか]発表[はっぴょう]の時[とき]、美咲[みさき]は自分[じぶん]の点数[てんすう]を確認[かくにん]しました。審査員[しんさいん]の一人[ひとり]は七十五[ななじゅうご]点[てん]、もう一人[ひとり]は八十[はちじゅう]点[てん]をつけました。でも三人目[さんにんめ]の審査員[しんさいん]、田中[たなか]の点数[てんすう]は「0」でした。ルールを破っ[やぶっ]たからです。コンクールでは、決まっ[きまっ]た曲[きょく]しか弾け[はじけ]ません。
美咲[みさき]は会場[かいじょう]の外[そと]に出[で]ました。奨学金[しょうがくきん]はもらえませんでした。もう一[いち]年[ねん]、待た[また]なければなりません。
「美咲[みさき]さん」
振り返る[ふりかえる]と、田中[たなか]が立っ[たっ]ていました。白い[しろい]髪[かみ]の、年[とし]をとった音楽家[おんがくか]でした。
「ルールを破っ[やぶっ]たから、零[れい]点[てん]をつけました」と田中[たなか]は言い[いい]ました。「それは本当[ほんとう]のことです。」
美咲[みさき]は何[なん]も言い[いい]ませんでした。
「でも」と田中[たなか]は続け[つづけ]ました。「あの曲[きょく]は、あなたが作り[つくり]ましたか?」
「はい」と美咲[みさき]は小さな[ちいさな]声[こえ]で言い[いい]ました。
田中[たなか]は少し[すこし]黙り[だまり]ました。そして、ポケットから名刺[めいし]を出し[だし]ました。「来月[らいげつ]、私[わたくし]のスタジオに来[き]てください。その曲[きょく]をもっと聴き[きき]たいです。」
美咲[みさき]は名刺[めいし]を受け取り[うけとり]ました。手[て]が少し[すこし]震え[ふるえ]ていました。
その夜[よる]、家[いえ]に帰っ[かえっ]て、美咲[みさき]はピアノの前[まえ]に座り[すわり]ました。奨学金[しょうがくきん]はありませんでした。でも名刺[めいし]がありました。そして、また弾く[ひく]理由[りゆう]がありました。
彼女[かのじょ]はゆっくりと弾き[ひき]始め[はじめ]ました。