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Sabia aruncată în râu în dimineața desființării domeniilor feudale

明治[めいじ]四[よん]年[ねん]、夏[なつ]の朝[あさ]のことだった。

源三郎[げんざぶろう]は川[かわ]の前[まえ]に一人[ひとり]で立っ[たっ]ていた。手[て]の中[なか]に古い[ふるい]刀[かたな]があった。その刀[かたな]はとても重かっ[おもかっ]た。でも、その重さ[おもさ]は鉄[てつ]の重さ[おもさ]だけではなかった。

四[よん]日[か]前[まえ]、政府[せいふ]から知らせ[しらせ]が来[き]た。「廃藩[はいはん]置県[ちけん]」。藩[はん]はなくなった。藩主[はんしゅ]は東京[とうきょう]へ行っ[いっ]た。武士[ぶし]はもう武士[ぶし]ではなくなった。

源三郎[げんざぶろう]の父[ちち]も武士[ぶし]だった。祖父[そふ]も武士[ぶし]だった。この刀[かたな]は祖父[そふ]の刀[かたな]だった。「これは武士[ぶし]の魂[たましい]だ」と父[ちち]はよく言っ[いっ]ていた。「大切[たいせつ]にしろ」と。

でも、今[いま]は違う[ちがう]。新しい[あたらしい]時代[じだい]が来[き]た。刀[かたな]を持つ[もつ]時代[じだい]は終わっ[おわっ]た。源三郎[げんざぶろう]には分かっ[わかっ]ていた。

川[かわ]の水[みず]は静か[しずか]だった。朝[あさ]の光[ひかり]が水[みず]の上[うえ]で光っ[ひかっ]ていた。鳥[とり]の声[こえ]だけが聞こえ[きこえ]た。

「父[ちち]上[じょう]、こんな朝[あさ]に何[なん]をしているんですか?」

振り返る[ふりかえる]と、十三[じゅうさん]歳[さい]の息子[むすこ]、太一[たいち]が走っ[はしっ]てきた。

「刀[かたな]を見[み]ていた」と源三郎[げんざぶろう]は静か[しずか]に言っ[いっ]た。

太一[たいち]は刀[かたな]を見[み]た。「捨てる[すてる]のですか?」

源三郎[げんざぶろう]は答え[こたえ]なかった。しばらく、二人[ふたり]は黙っ[だまっ]ていた。

「昨日[きのう]、父[ちち]上[じょう]は泣い[ない]ていましたか?」と太一[たいち]は小さな[ちいさな]声[こえ]で聞い[きい]た。

「武士[ぶし]は泣か[なか]ない」と源三郎[げんざぶろう]は言っ[いっ]た。

「でも、父[ちち]上[じょう]の目[め]が赤かっ[あかかっ]た」

源三郎[げんざぶろう]は何[なん]も言わ[いわ]なかった。川[かわ]を見[み]た。長い[ながい]時間[じかん]が過ぎ[すぎ]た。

「太一[たいち]。お前[おまえ]には刀[かたな]は要ら[いら]ない。お前[おまえ]の時代[じだい]は違う[ちがう]。学校[がっこう]へ行け[いけ]。よく勉強[べんきょう]しろ。それが今[いま]の武士[ぶし]の道[みち]だ」

太一[たいち]はじっと父[ちち]を見[み]た。何[なん]も言わ[いわ]なかった。源三郎[げんざぶろう]はゆっくり刀[かたな]を高く[たかく]上げ[あげ]た。そして、川[かわ]へ投げ[なげ]た。

刀[かたな]は水[みず]の中[なか]に消え[きえ]た。音[おと]は小さかっ[ちいさかっ]た。小さな[ちいさな]波[なみ]だけが残っ[のこっ]た。それもすぐに消え[きえ]た。

源三郎[げんざぶろう]は思っ[おもっ]た。父[ちち]は怒る[おこる]だろうか。――いや、父[ちち]なら分かる[わかる]はずだ。時代[じだい]は変わっ[かわっ]た。

太一[たいち]は父[ちち]の手[て]を握っ[にぎっ]た。その手[て]は少し[すこし]震え[ふるえ]ていた。二人[ふたり]は川[かわ]を見[み]ていた。水[みず]は静か[しずか]に、ゆっくりと流れ[ながれ]続け[つづけ]た。