เช้าวันที่ฉันสบตากับหมีที่ชิเรโตโกะ
A2 · Nature & Adventure
田中[たなか]ユキは午前[ごぜん]五[ご]時[じ]に目[め]が覚め[さめ]ました。外[そと]はまだ暗かっ[くらかっ]たですが、空[そら]は少し[すこし]ずつ明るく[あかるく]なっていました。
ユキは知床[しれとこ]五[ご]湖[こ]で朝日[あさひ]の写真[しゃしん]を撮り[とり]たかったのです。彼女[かのじょ]はカメラを持っ[もっ]て、一人[ひとり]で山道[さんどう]を歩き[あるき]始め[はじめ]ました。
前の日[まえのひ]、公園[こうえん]のレンジャーがこう言い[いい]ました。「一人[ひとり]で早朝[そうちょう]に歩か[あるか]ないでください。この辺[へん]にはヒグマが多い[おおい]です。」でも、ユキは「大丈夫[だいじょうぶ]」と思い[おもい]ました。
道[みち]は細く[ほそく]て、両側[りょうがわ]に木[き]がたくさんありました。朝[あさ]の空気[くうき]は冷たく[つめたく]て、草[くさ]の上[うえ]には露[ろ]がありました。鳥[とり]の声[こえ]だけが聞こえ[きこえ]ました。ユキは完全[かんぜん]に一人[ひとり]でした。
湖[みずうみ]の近く[ちかく]まで来[き]た時[とき]、ユキは急[きゅう]に止まり[とまり]ました。草[くさ]の中[なか]に、大きな[おおきな]黒い[くろい]影[かげ]がありました。最初[さいしょ]、ユキは岩[いわ]だと思い[おもい]ました。でも、その影[かげ]がゆっくり動き[うごき]ました。ヒグマでした。
熊[くま]はとても大きかっ[おおきかっ]たです。茶色い[ちゃいろい]毛[け]は朝[あさ]の光[ひかり]の中[なか]で輝い[かがやい]ていました。熊[くま]は静か[しずか]に草[くさ]を食べ[たべ]ていました。ユキの心臓[しんぞう]がドキドキしました。足[あし]が動き[うごき]ませんでした。そして、熊[くま]がユキの方[ほう]を見[み]ました。目[め]が合い[あい]ました。三[さん]秒間[びょうかん]、何[なん]も起き[おき]ませんでした。
ユキはレンジャーの言葉[ことば]を思い出し[おもいだし]ました。「走ら[はしら]ないでください。ゆっくり後ろ[うしろ]に歩い[あるい]てください。」ユキはゆっくり、一歩[いっぽ]、また一[いち]歩[ほ]と後ろ[うしろ]に歩き[あるき]ました。目[め]は熊[くま]から離し[はなし]ませんでした。
熊[くま]はしばらくユキを見[み]ていました。それから、また草[くさ]を食べ[たべ]始め[はじめ]ました。ユキに興味[きょうみ]がないようでした。
ユキは宿[やど]まで走っ[はしっ]て戻り[もどり]ました。部屋[へや]に入っ[はいっ]て、ドアを閉め[しめ]ました。手[て]が震え[ふるえ]ていました。ベッドに座っ[すわっ]て、深く[ふかく]息[いき]を吸い[すい]ました。怖かっ[こわかっ]たです。とても怖かっ[こわかっ]たです。
でも、同時[どうじ]に、ユキは何[なん]か特別[とくべつ]なものを感じ[かんじ]ました。熊[くま]の目[め]は、金色[きんいろ]に光っ[ひかっ]ていました。その目[め]の中[なか]に、深く[ふかく]て静か[しずか]な何[なん]かがありました。長い[ながい]間[あいだ]、この森[もり]で生き[いき]た命[いのち]の力[ちから]でした。ユキは、自分[じぶん]がとても小さい[ちいさい]存在[そんざい]だと感じ[かんじ]ました。でも、その小さ[ちいさ]さは悪い[わるい]感じ[かんじ]ではありませんでした。
彼女[かのじょ]はカメラを見[み]ました。朝日[あさひ]の写真[しゃしん]は一[いち]枚[まい]もありませんでした。でも、それでいいと思い[おもい]ました。