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Cântecul necunoscut ales de cor la final

春[はる]の発表会[はっぴょうかい]まで、あと一[いち]週間[しゅうかん]でした。

合唱団[がっしょうだん]の練習[れんしゅう]室[しつ]に入る[はいる]と、指揮者[しきしゃ]の山本[やまもと]先生[せんせい]が古い[ふるい]木[き]の箱[ばこ]を持っ[もっ]ていました。箱[ばこ]はとても古く[ふるく]て、茶色く[ちゃいろく]なっていました。

「今日[きょう]、大切[たいせつ]な話[はなし]があります」と先生[せんせい]は言い[いい]ました。

団員[だんいん]のハルカは少し[すこし]心配[しんぱい]になりました。発表会[はっぴょうかい]の一[いち]週間[しゅうかん]前[まえ]に「大切[たいせつ]な話[はなし]」は、良い[よい]ニュースではないかもしれないと思っ[おもっ]たからです。

山本[やまもと]先生[せんせい]は箱[ばこ]の中[なか]から古い[ふるい]紙[かみ]を出し[だし]ました。その紙[かみ]には、手[て]で書い[かい]た音符[おんぷ]がたくさんありました。

「これは、去年[きょねん]亡くなっ[なくなっ]た田中[たなか]さんが作っ[つくっ]た歌[うた]です。田中[たなか]さんは十五[じゅうご]年間[ねんかん]、私たち[わたしたち]の合唱団[がっしょうだん]にいました。今年[ことし]の最後[さいご]の曲[きょく]として、この歌[うた]を選び[えらび]ました」

練習[れんしゅう]室[しつ]が静か[しずか]になりました。誰[だれ]も知ら[しら]ない曲[きょく]です。楽譜[がくふ]も古く[ふるく]て、読み[よみ]にくいです。

「でも、先生[せんせい]……」とハルカは小さな[ちいさな]声[こえ]で言い[いい]ました。「お客さん[おきゃくさん]は知ら[しら]ない曲[きょく]を聞い[きい]て、喜び[よろこび]ますか? 変[へん]に思い[おもい]ませんか?」

山本[やまもと]先生[せんせい]は少し[すこし]だけ笑い[わらい]ました。「わかりません。でも、やってみましょう」

一[いち]週間[しゅうかん]、合唱団[がっしょうだん]は毎日[まいにち]練習[れんしゅう]しました。最初[さいしょ]は難しかっ[むずかしかっ]たです。音[おと]が合わ[あわ]ない時[とき]もありました。でも、少し[すこし]ずつ、みんなは歌[うた]を覚え[おぼえ]ました。その曲[きょく]は、悲しく[かなしく]て、でも温かい[あたたかい]歌[うた]でした。ハルカは練習[れんしゅう]するたびに、田中[たなか]さんのことを考え[かんがえ]ました。会っ[あっ]たことはありませんでしたが、この歌[うた]を通し[とおし]て、何[なん]かを感じる[かんじる]ことができました。

発表会[はっぴょうかい]の日[ひ]、ホールは満員[まんいん]でした。最初[さいしょ]の二[に]曲[きょく]は有名[ゆうめい]な曲[きょく]で、お客さん[おきゃくさん]はよく知っ[しっ]ていました。

三[さん]曲目[きょくもく]が始まり[はじまり]ました。田中[たなか]さんの歌[うた]です。

ホールがとても静か[しずか]になりました。お客さん[おきゃくさん]は知ら[しら]ない曲[きょく]だから、戸惑っ[とまどっ]ているかもしれない、とハルカは思い[おもい]ながら歌い[うたい]ました。

歌[うた]が終わっ[おわっ]た時[とき]、最初[さいしょ]は何[なん]も聞こえ[きこえ]ませんでした。でも、前[まえ]の列[れつ]に座っ[すわっ]ていた一人[ひとり]のお年寄り[としより]の女性[じょせい]が、静か[しずか]に立ち上がり[たちあがり]ました。その人[ひと]の目[め]には涙[なみだ]がありました。

「この歌[うた]……」と女性[じょせい]は言い[いい]ました。声[こえ]は小さく[ちいさく]て、震え[ふるえ]ていました。「母[はは]が若い[わかい]時[とき]に作っ[つくっ]た歌[うた]です」

田中[たなか]さんのお母さん[おかあさん]でした。ホール全体[ぜんたい]が、その言葉[ことば]を聞き[きき]ました。

「母[はは]はずっと前[まえ]にこの歌[うた]を作り[つくり]ました。でも、私[わたくし]はもう長い[ながい]間[あいだ]、聞い[きい]ていませんでした。もう忘れ[わすれ]てしまったと思っ[おもっ]ていました」

ハルカの目[め]が熱く[あつく]なりました。誰[だれ]も知ら[しら]ない曲[きょく]だと思っ[おもっ]ていました。でも、一人[ひとり]の人[ひと]にとって、それは一番[いちばん]大切[たいせつ]な曲[きょく]でした。

その夜[よる]、ハルカは家[いえ]に帰っ[かえっ]てから日記[にっき]にこう書き[かき]ました。「今日[きょう]わかったこと:誰[だれ]も知ら[しら]ない曲[きょく]でも、誰[だれ]かがずっと覚え[おぼえ]ている」