Ölen Eşimin Adı Bir Haiku Yazısında Bulundu

Altmış yedi yaşındaki emekli kütüphaneci Hiroshi, ölümünden iki ay sonra, ölen eşinin adıyla ve gizli takma adıyla yayımlanmış bir haiku bulduğunda, şiirin bir sahtekarlık mı, bir tesadüf mü, yoksa basılı halde göremeyeceğini bilerek yazdığı kasıtlı bir veda mı olduğunu öğrenmek için çaresizce kızına ve derginin editörüne mesaj gönderir.

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奈津子[なつこ]、今[いま]いるか。

少し[すこし]、変[へん]なことがあった。

お父さん[おとうさん]どうしたの

変[へん]なことって?

「野分[のわけ]」の今月[こんげつ]号[ごう]を読ん[よん]でいた。

投稿[とうこう]欄[らん]に、お母さん[おかあさん]の名前[なまえ]があった。

……え

どういうこと?

「立川[たちかわ]文子[ふみこ](霞[かすみ]文子[ふみこ])」と書い[かい]てある。

本名[ほんみょう]とペンネームをかっこで並べる[ならべる]書き方[かきかた]だ。お母さん[おかあさん]だけがしていた。

お母さん[おかあさん]は今年[ことし]三[さん]月[がつ]に亡くなっ[なくなっ]た。雑誌[ざっし]はこの十[じゅう]月[がつ]号[ごう]だ。

ちょっと待っ[まっ]て

それ本当[ほんとう]に?

何度[なんど]見[み]ても同じ[おなじ]だ。

句[く]まで載っ[のっ]ている。

なんて書い[かい]てあるの

「冬ざれ[ふゆざれ]や 声[こえ]なき便り[たより] 春[はる]届く[とどく]」

……

お父さん[おとうさん]

お母さん[おかあさん]の句[く]だと思う[おもう]。

言葉[ことば]の選び方[えらびかた]も、季語[きご]の置き[おき]方[かた]も、お母さん[おかあさん]らしい。

ただ、なぜ今頃[いまごろ]、が分から[わから]ない。

亡くなる[なくなる]前[まえ]に投稿[とうこう]してたんじゃないかな

掲載[けいさい]が遅れる[おくれる]ことってあるよね、きっと

その可能性[かのうせい]はある。

だが確認[かくにん]しないと落ち着か[おちつか]ない。

「野分[のわけ]」の編集部[へんしゅうぶ]に問い合わせ[といあわせ]てみるべきか。

うん、絶対[ぜったい]したほうがいい

連絡先[れんらくさき]調べる[しらべる]

「野分[のわけ]」編集部[へんしゅうぶ]、LINEで問い合わせ[といあわせ]できるみたい

宮本[みやもと]さんって方[ほう]をここに招待[しょうたい]してもいい?

直接[ちょくせつ]話し[はなし]てもらったほうが早い[はやい]と思う[おもう]から

頼む[たのむ]。

奈津子[なつこ]が宮本[みやもと]恵子[けいこ]をグループに追加[ついか]した。

はじめまして。野分[のわけ]編集部[へんしゅうぶ]の宮本[みやもと]と申し[もうし]ます。

どのようなご相談[そうだん]でしょうか。

宮本[みやもと]さん、はじめまして。立川[たちかわ]浩[ひろし]と申し[もうし]ます。

今月[こんげつ]号[ごう]の投稿[とうこう]欄[らん]に「立川[たちかわ]文子[ふみこ](霞[かすみ]文子[ふみこ])」という名前[なまえ]で句[く]が掲載[けいさい]されておりますが、立川[たちかわ]文子[ふみこ]は私[わたくし]の妻[つま]で、今年[ことし]三[さん]月[がつ]に他界[たかい]しております。

誰[だれ]がこの句[く]を投稿[とうこう]したのかを確認[かくにん]していただくことはできますか。

立川[たちかわ]様[さま]。

ご逝去[せいきょ]のこと、存じ[ぞんじ]ませんでした。

少々[しょうしょう]お時間[じかん]をください。確認[かくにん]してまいります。

お父さん[おとうさん]、大丈夫[だいじょうぶ]?

ああ。句[く]を何度[なんど]も読ん[よん]でいる。

「冬ざれ[ふゆざれ]や 声[こえ]なき便り[たより] 春[はる]届く[とどく]」

見れ[みれ]ば見る[みる]ほど、お母さん[おかあさん]だと思う[おもう]。

うん

春[はる]、届い[とどい]たね

妻[つま]の書き物[かきもの]机[つくえ]に置か[おか]れた古い[ふるい]硯[すずり]

お母さん[おかあさん]の硯[すずり]だ…

久しぶり[ひさしぶり]に見[み]た

机[つくえ]の引き出し[ひきだし]に、まだ入っ[はいっ]ていた。

ずっと触れ[ふれ]られなかったのに、今日[きょう]は自然[しぜん]に手[て]が伸び[のび]た。

あのさ……私[わたくし]もね、最初[さいしょ]ちょっと怖かっ[こわかっ]たんだよ正直[しょうじき]。誰[だれ]かが名前[なまえ]を使っ[つかっ]てるんじゃないかって。でも、あの句[く]読ん[よん]だらさ、絶対[ぜったい]お母さん[おかあさん]だって分かっ[わかっ]た。「声[こえ]なき便り[たより]」って……うん。そうだよね。ごめん、うまく言え[いえ]なくて。

お待た[また]せいたしました。確認[かくにん]が取れ[とれ]ました。

こちらの句[く]は、昨年[さくねん]十二[じゅうに]月[がつ]に、立川[たちかわ]文子[ふみこ]様[さま]ご本人[ほんにん]から郵便[ゆうびん]でお送り[おくり]いただいたものです。

投稿[とうこう]が重なり[かさなり]、掲載[けいさい]が今月[こんげつ]号[ごう]になりました。

ご逝去[せいきょ]後[ご]の掲載[けいさい]となってしまったこと、編集部[へんしゅうぶ]として心[こころ]よりお詫び[わび]申し上げ[もうしあげ]ます。

そうでしたか。

昨年[さくねん]十二[じゅうに]月[がつ]。

十二[じゅうに]月[がつ]って……

お母さん[おかあさん]、その頃[ころ]もう入退院[にゅうたいいん]してたよね

そうだ。体[からだ]が辛い[つらい]時期[じき]だった。

それでも、投稿[とうこう]していたとは知ら[しら]なかった。

一[いち]点[てん]、お伝え[つたえ]してもよいでしょうか。

投稿[とうこう]封筒[ふうとう]に、短い[みじかい]メモが同封[どうふう]されておりました。

「掲載[けいさい]が来春[らいしゅん]以降[いこう]になっても構い[かまい]ません」と記さ[しるさ]れておりました。

……

え

つまり、お母さん[おかあさん]は分かっ[わかっ]ていたのか。

春[はる]には、もう自分[じぶん]がいないかもしれない、と。

断言[だんげん]はできませんが……。

私[わたくし]どもも、こうしてご連絡[れんらく]いただいて、初めて[はじめて]事情[じじょう]を知り[しり]ました。

立川[たちかわ]様[さま]にお伝え[つたえ]できて、よかったと思っ[おもっ]ております。

素晴らしい[すばらしい]句[く]でした。心[こころ]よりご冥福[めいふく]をお祈り[いのり]申し上げ[もうしあげ]ます。

ありがとうございます、宮本[みやもと]さん

本当[ほんとう]にありがとうございました

こちらこそ。どうぞお大事[だいじ]になさってください。

宮本[みやもと]恵子[けいこ]がグループから退出[たいしゅつ]した。

お父さん[おとうさん]……

大丈夫[だいじょうぶ]だ。

大丈夫[だいじょうぶ]じゃないよそれ

少し[すこし]、泣い[ない]てしまった。

老人[ろうじん]が泣く[なく]のは、みっともないな。

みっともなくない

私[わたくし]も泣い[ない]てるから😭

そうか。

お母さん[おかあさん]は、分かっ[わかっ]て書い[かい]たんだ。

声[こえ]がなくなった後[あと]でも届く[とどく]ように、と思っ[おもっ]て。

「声[こえ]なき便り[たより]」という言葉[ことば]が、今[いま]になってずっしりと重い[おもい]。

うん

でも届い[とどい]たよ、ちゃんと

そうだな。

届い[とどい]た。

ねえ、お父さん[おとうさん]。ご飯[ごはん]食べ[たべ]た?

忘れ[わすれ]ていた。

もう😭

今[いま]から行く[いく]

来[こ]なくていい。遠い[とおい]だろう。

近く[ちかく]のスーパーで何[なん]か買っ[かっ]て行く[いく]から

一緒[いっしょ]に食べよ[たべよ]

……そうしてもらえると、助かる[たすかる]。

すぐ行く[いく]ね

ありがとう。

奈津子[なつこ]、来る[くる]前[まえ]に一[ひと]つだけ。

「野分[のわけ]」の次号[じごう]に、私[わたくし]も句[く]を投稿[とうこう]してみようかと思っ[おもっ]ている。

え、ほんとに?!

お父さん[おとうさん]が??

何十[なんじゅう]年[ねん]も、お母さん[おかあさん]の隣[となり]で俳句[はいく]を眺め[ながめ]ていただけだった。

そろそろ、返事[へんじ]を書い[かい]てもいいかもしれない。

🌸

絶対[ぜったい]書い[かい]て

うまくできるかは分から[わから]ないが。

大丈夫[だいじょうぶ]

お母さん[おかあさん]に届く[とどく]よ、きっと

……そうだな。

きっと届く[とどく]。